1985年、Daviesの著書「Steps to Follow」においてPusher現象という概念が登場し、ときは同じく網本らもPusher現象と垂直性の謎に取り組んでいた。あれから30年余が過ぎ、ときは移りリハビリテーションにおいて耳目を集めている。これまで、半側空間無視の関連症の一つであったが、現在は独立した徴候として捉えられるようになった。しかし、臨床的には脳血管障害における阻害因子と知られているにもかかわらず、その病態、経過、責任病巣、発生メカニズム等については、まだまだ十分に明らかでなく仮説的検証が端緒についたばかりである。 本書は、Pusher現象と関連徴候について臨床評価、実験方法、メカニズム、治療に焦点を絞った世界的にも類をみない本邦初の書籍化である。ここでの内容は、多くの医療関係者に緻密なデータに基づいた知見、およびメカニズムの解明、効果的な治療方法に一筋の光を必ずもたらすであろう。最先端の医療で活躍する筆者たちが語る、この分野の発展と寄与を肌で感じてほしい。